月夜の翡翠と貴方
ルトは、やっぱり優しい声で。
鼻をすすりながら、私は小さく頷いた。
*
この屋敷が自然に囲まれたところにあったからか。
紛れれば、向こうの屋敷からこちらの存在は見えないだろう、と思えるくらいには、たくさん木々が重なってあった。
ルトは私の手を引いて、木陰に行くと、そこに腰をおろした。
私は、ルトの前に立つ。
辺りはもう暗くなる頃で、ドレスでは少し肌寒い。
「ん」
ルトが上着を脱いで、私の肩にかけた。
「…ありがと」
「どういたしまして」
その言葉に、本当にいつも通りだな、と思っていると、突然に腕を引っ張られた。
「えっ……………」
私の体は、ルトの腕のなかに収まる。
そして、頭を撫でられた。
「……ル、ルトっ…」
「ん?」
…甘い、笑み。
その顔に思わず顔が熱くなるのを感じると、はは、と笑われた。