月夜の翡翠と貴方


私は眉を寄せて、誰?という顔をした。

ルトは、「あー」と笑いながら、頬をかく。

「ミラゼとは、今日の昼会ったんだけどさ。依頼の関係で、協力してくれって」

「………そう、なんだ」

返事をするが、よくわからない。

「うん。んで、イビヤさんっていうのが…召使いの人なんだけど。わかる?」


すごい優しそうな人、とルトが言う。

…ま、まさか。

私は、ひとりの人物を思い浮かべて、変な汗が出た。


「…私にまで、敬語で話してた人………?」


あの地下へ行くまで、一緒にいた、あの男。

「あー…たぶんその人だ。とにかく礼儀正しいの。その人、俺と同業なんだって」

「…えっ…………」

あの男が、依頼屋?

信じられない。


「ミラゼとイビヤさんが組んで、カナイリー家に関する依頼をされたんだって」


ルトによると、イビヤというあの召使いの男は、潜入ということでカナイリー家の屋敷に一ヶ月前から仕えていたらしい。


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