月夜の翡翠と貴方


吐き気が、した。


「触らないで……っ」


パシャッ…………


…水の、音。

驚いて横を見ると、ルトがカップを男達の頭の上で逆さに持ち、立っていた。


カップからは水滴がポタポタと落ち、男の頬からも雫が滴っている。

水を頭からかけられた男は、目を見開いていて、何が起こったかわからないようだった。


「なにしてんの、おっさん」


聞いたことのない、低い声。

もともとの声が少し高いからか、その声はルトのものでない気がした。


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