月夜の翡翠と貴方


私はルトを見上げると、「王子様ではないけど」と呟いた。


「…ご主人様だよ」


そう言って、ルトの頬にキスをする。

…初めて、私から触れる。

見開かれる深緑を見て、私はルトの首に腕を回した。


「…………早く、行こう」

「……ん」

お互いに冷めない熱が、触れる肌で伝わる。

頭の奥が熱くなって、おかしくなりそうな感覚。


けれど、なんだか心地よいなと、思った。






真っ黒な空に、月が昇るころ。


もともと示し合わせていたらしく、最寄りの宿につくと、ふたりがいた。



「今日はお疲れ様〜!」


ルトと私の部屋に、ミラゼとイビヤが来て、食事と共に酒を飲み合う。

ミラゼが酒の入ったグラスを持って、盛り上がっている。


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