月夜の翡翠と貴方
私はルトを見上げると、「王子様ではないけど」と呟いた。
「…ご主人様だよ」
そう言って、ルトの頬にキスをする。
…初めて、私から触れる。
見開かれる深緑を見て、私はルトの首に腕を回した。
「…………早く、行こう」
「……ん」
お互いに冷めない熱が、触れる肌で伝わる。
頭の奥が熱くなって、おかしくなりそうな感覚。
けれど、なんだか心地よいなと、思った。
*
真っ黒な空に、月が昇るころ。
もともと示し合わせていたらしく、最寄りの宿につくと、ふたりがいた。
「今日はお疲れ様〜!」
ルトと私の部屋に、ミラゼとイビヤが来て、食事と共に酒を飲み合う。
ミラゼが酒の入ったグラスを持って、盛り上がっている。