月夜の翡翠と貴方
「…ミラゼ。あまり飲みすぎないで下さいね」
私は目の前でミラゼを制する、穏やかそうな男を、見ていた。
イビヤは今、召使いの服を脱ぎ、仕事用なのか、動きやすい服装をしている。
未だに信じられない。
彼は一体、どこから私の事情を知って、私に発言していたのだろう。
やがて、イビヤが私の視線に気づき、微笑む。
「…奪還、成功してよかったです」
「え…あ、ありがとうございます」
イビヤは私の姿を見て、満足気に目を細めた。
「…本当に、よかったです」
今の私は、ドレスを脱ぎ、もとから着ていた麻の服を着ている。
イビヤが、私に必要だろうと言って、マテンの邸から持ってきてくれたのだ。
横で、ミラゼがルトに酒を進め、ある意味で盛り上がっているなか。
私は水の入ったカップに口つけながら、「…あの」とイビヤを見た。