月夜の翡翠と貴方


そして立ち上がると、寝台のほうを見据える。


「………………」


…寝台は、ふたつ。

私は少しぼうっとしながら、そちらへ歩いた。


「…えっと、私こっち使うから…」

「何言ってんの」


左を指差すと、腕を引っ張られた。

そして、右の寝台の上に座らせられると、そのまま押し倒された。


「一緒に寝るよ」


…酒は、ルトに飲ませては駄目だ。

泥酔したら、寝るだけかと思っていたが…


私を見下ろす笑みは、妖艶なもので。

見惚れてしまう。

深緑に捉えられて、離れられなくなる。

…くらくら、する。

最初の頃、思った通りだ。

堕ちていく。

どこまでもどこまでも、この男に堕ちていくのだ。


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