月夜の翡翠と貴方
…客だろうか。
そう思い、フードを一層目深に被る。
その様子を見ていた青年は、それに向かって指を差した。
「…そのフード、とってくれない?」
青年からは見えない、少女の目が見開かれた。
内心で焦りを感じながら、あくまで平静な声色を努めて返答する。
「…なぜ、ですか」
「顔が見たいから」
…すぐに返ってきた返事。
当然だろう。
しかし、少女はその要求に応える事が出来ない。
ぎゅ、と服の裾を握りしめた。
「すみませんが…それは、出来ません」
やや俯きがちに、彼の目から逃れるように。
感情を押し殺して、声を出す。
「…なんで?」
すると、青年の声が訝しげなものへと変わった。
その射抜くような視線に、少女の焦りが増していく。
「そ…それだけは、出来ません。ごめんなさい」
「だから、なんでだよ」
青年の声色も、段々と厳しいものになっていった。