月夜の翡翠と貴方
「…ちょ、ちょっと待って」
「……ん」
いったん落ち着こう、とルトの前に手をかざす。
私は酔いを冷まそうと、深呼吸をした。
そして、目の前の狼を見つめる。
「…ルト、酔ってるでしょう」
「……うん」
きっと、これで流されてしまうと、あとあと面倒になる。
これからも、この男のペースに飲まれてしまう。
「…疲れてるでしょう」
「……それは……そんなには」
「…私は疲れてる」
走り回ったのもあるが、私はこの二日ずっと泣いていた。
「…………じゃあ、駄目?」
今度は寂しそうな目をされた。
全く、表情豊かなひとだ。
…なんて。いけない。流されてはいけない。
…それに。
「……時間は、たくさんあるんでしょう?」
そう言うと、ルトの首に腕を絡める。
私から顔を近づけ、深緑を見つめた。