月夜の翡翠と貴方
ルトは私を抱きしめて、ふ、と笑った。
「あったかい」
「…少し、熱い」
布団もあるのに、この状態は熱い。
けれどルトは、離そうとしなかった。
頭上から聞こえる声が、心地よい。
「…………ねぇ」
「ん?」
見上げると、細められた深緑と目が合う。
私は、訊こうか躊躇っていたことを、口にした。
「『ルト・サナウェル』って、本名?」
私の言葉に、ルトは少し驚いているようだった。
けれどすぐに、優しく微笑む。
「……本名だよ?」
…嘘か、本当か。
しかし、ミラゼもリロザも『ルト』と呼ぶのだから、本名なのかもしれない。
「…………そう」
なんだか、本名でもなんでも、いい気がした。