月夜の翡翠と貴方
エピローグ



『私を忘れないで』



翡翠葛の花言葉はこれなんだよ、と教えると、

貴方は優しく笑った。



貴方がエルガの奴隷屋を訪れたときから、

変わった人だ、と思っていた。


私があの十五秒間で貴方の横を通り過ぎることができて、

あのままエルガの奴隷屋にいたとしても。

きっと、貴方のことは忘れることがないんだと思う。

だって、可笑しな人だもの。


私に笑いかけた。

私に優しさをくれた。

私の涙を掬った。


貴方に会ってから、私は泣いてばかりだ。

『泣き虫』と貴方は言うけれど、

それは間違いなく、貴方のせいなのに。


私に、いろんな感情を教えたのは、貴方でしょう。

私を変えたのは、貴方でしょう。


押さえ込んで居た感情は、貴方の言葉で溢れてくる。



< 705 / 710 >

この作品をシェア

pagetop