月夜の翡翠と貴方
エピローグ
『私を忘れないで』
翡翠葛の花言葉はこれなんだよ、と教えると、
貴方は優しく笑った。
貴方がエルガの奴隷屋を訪れたときから、
変わった人だ、と思っていた。
私があの十五秒間で貴方の横を通り過ぎることができて、
あのままエルガの奴隷屋にいたとしても。
きっと、貴方のことは忘れることがないんだと思う。
だって、可笑しな人だもの。
私に笑いかけた。
私に優しさをくれた。
私の涙を掬った。
貴方に会ってから、私は泣いてばかりだ。
『泣き虫』と貴方は言うけれど、
それは間違いなく、貴方のせいなのに。
私に、いろんな感情を教えたのは、貴方でしょう。
私を変えたのは、貴方でしょう。
押さえ込んで居た感情は、貴方の言葉で溢れてくる。