月夜の翡翠と貴方
「……来るの、遅くなったし。そもそも、俺が席を立たなければ……」
「ルト!」
私の出した大きな声に、ルトは目を見開いた。
「ルトは何も悪くない。謝る必要なんかないのに、謝らないで」
彼は少しだけ厳しくなった橙の目を見て、そして。
柔らかく、ふは、と笑った。
「ん、わかった」
…あぁ、ルトだ。
見えた明るい笑顔に、安心する。
「えっと……助けてくれて、ありがとう」
お礼はしっかりしなくては、と、ぺこっと頭を下げると、ルトは優しく笑った。
「いいよ。無事でなにより」
そう言って、私の手を掴む。