月夜の翡翠と貴方


テントを眺めながら、私は一言感想を述べた。


「………小さいね」


想像以上に、小さい。

あの袋に収まるのだから、だいぶ小さいのだろうと思っていたが、これは。

というか、小さすぎやしないか。


「昨日まで、使ってたのは俺ひとりだったからな」

なんて言って、ルトは笑っている。


「狭いかもしれんが、つめて入れば大丈夫だろ」


…それにしても、小さすぎる。

買い物をしているとき、私は自分用のテントが必要だと言ったが、余計な荷物になるからと、ルトが止めたのだ。

やはり、私のものを買ったほうがよかったのではないか。


目の前の群青のテントは、私が過ごしていたエルガの店のテントは愚か、エルガのテントよりはるかに小さい。



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