月夜の翡翠と貴方
「おやすみなさい………」
私がそう言うと、テントの中は急に静かになった。
外で静かに鳴く虫の音を聞きながら、目を閉じた。
*
「……………」
リンリン…と、虫の鳴き声がする。
テントの中に、微かに月の光が入っている。
……どうしよう。
全く眠れない。
あれから、三十分ほど経っただろうか。
軽く予想はしていたが、こんなに寝れないとは。
私はひとり、虫の音を聞きながら、寝られずにいた。
隣で、こちらに背中を向けるルトを見つめる。
微かに寝息が聞こえた。
恐らく、寝ているのだろう。
初めてなのだ。
テントの中で寝るのは慣れているが、こんなに狭いのは初めてである。
しかも、すぐ隣に同じぐらいの歳の男が寝ているのだ。
いくら疲れているとはいえ、すんなり寝られるわけがない。