月夜の翡翠と貴方


「おやすみなさい………」


私がそう言うと、テントの中は急に静かになった。

外で静かに鳴く虫の音を聞きながら、目を閉じた。






「……………」


リンリン…と、虫の鳴き声がする。

テントの中に、微かに月の光が入っている。


……どうしよう。

全く眠れない。

あれから、三十分ほど経っただろうか。

軽く予想はしていたが、こんなに寝れないとは。


私はひとり、虫の音を聞きながら、寝られずにいた。

隣で、こちらに背中を向けるルトを見つめる。

微かに寝息が聞こえた。

恐らく、寝ているのだろう。

初めてなのだ。

テントの中で寝るのは慣れているが、こんなに狭いのは初めてである。

しかも、すぐ隣に同じぐらいの歳の男が寝ているのだ。

いくら疲れているとはいえ、すんなり寝られるわけがない。



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