月夜の翡翠と貴方


そう考えると、隣でこうも早く寝付いた男に、感心すらした。


私も目をつむり寝ることを試みるが、やはり無理。

諦めた私は、隣のルトを横目に、そっとテントから出た。




外へ出てみると、森へ入った時よりも辺りの闇が深くなっている。

テントを張ったこの空間だけが、一様に月の光で明るくなっていた。


ぼうっと、夜空を見上げる。

今日は色々ありすぎて、もう頭でいちいち考えるのも面倒だ。

この月の光が、心地良い。

空を見上げたまま、私は目を閉じた。



太陽による日光より、火で灯す明かりより、私は月の光が好きだ。

日中の光は、日向を輝かせ、日陰を暗くする。

まるで、光と影を分けてしまう。

火で灯す明かりは、皆に与えられない。

だから私は、月光が好きなのだ。

月は、影を、闇を優しく照らす。

すべての夜に、すべての暗がりに、平等に光を与えるのだ。

 

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