月夜の翡翠と貴方


微かに目を開け、細めながら上を見ていると、近くから足音が聞こえた。
 

「逃げたのかと思った」


…ルトの、声。

振り返ると、テントから出てこちらを見つめながら立っている、彼が見えた。


「……起きてたの?」

「いや。半分寝てた」


ルトは小さくあくびをする。

起こしてしまったのは申し訳ないけれど、眠いのなら寝ていればいいのに。


「………逃げねえの?」


ルトは、月の下に立つ私を見つめて、そう言った。

「……逃げる、って?」

「俺から」

…ルトから、逃げる?



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