月夜の翡翠と貴方
儚くて、美しくて。
ルトは、『ファナ』の全てに魅せられる。
揺れる長い髪は、さらさら風にたなびいて。
月明かりで碧色に、光が灯った。
「………『ジェイド』」
深緑の瞳を揺らしながら、そう呟いたルトを、私は不思議そうに見つめた。
「…ジェイド・バイン」
ルトがそう呟いた言葉は、聞き覚えのあるものだった。
「…………翡翠葛(ヒスイカズラ)…?」
…『翡翠葛』。
確か豆科の植物で、とても綺麗な碧色をしている。
花という花こそ咲かないが、碧の房が幾重にも重なってできていて。
逆光のなかで、まるで淡く光が灯ったようにツルが浮かび上がる様は、それはそれは美しい。
いつかの書で見た、とても珍しいものだった。
私はそれだけ思い出すと、首を傾げる。