月夜の翡翠と貴方
翡翠葛が、なんだというのか。
私の様子にルトは微笑んで、言った。
「…『ジェイド』。お前の、名前だよ」
呼ばれた私は、目を見開く。
…私の、名前?
「翡翠玉の意味も込めて、ジェイドだ。わかるだろうけど、その髪からな」
…ジェイド。
翡翠玉の、ジェイド。
そうだ。
考えておく、と言った。
名前は、それぞれの主人がつけていく。
ルトからもらった名前は、ジェイド。
翡翠葛…………
ルトは、少しずつ私の近くへ足を動かし始めた。
だんだんと、速くなってくる鼓動。
近づく、彼。
そのひとは私の前まで来ると、目を細め、顔を覗き込むようにして、言った。
「これから、お前は『ジェイド』だ。いいな?」
「………」
こくん、と、静かに頷くことしかできない。
「よし。我ながらぴったりすぎる名前だな」
そう、自慢気に笑うルト。
ジェイドと名付けられた私は、ルトを見つめる橙の瞳を、ゆらゆらと揺らした。