月夜の翡翠と貴方
「………エル、ガ……?」
「ごめん、ルトなんだけど。寝ぼけてんのー?」
はは、と少年のような、少し高い声が笑った。
…え。
深、緑…………?
その声でぱちっと、一気に目が開いた。
はっきりと見えたその姿に、思わず混乱する。
「……え……あ…え…?」
「はは。おはよ」
そんな私に、目の前の深緑の目が優しく細められた。
この笑い顔は、昨日何度も見たもので。
…そうだった。
私は昨日、この青年に買われたのだ。
ゆっくりと、起き上がる。
ルトはもう、身支度を終えていた。
「……起きるの、早いね…」
碧色の髪を手ぐしで梳きながら、まだしっかりと開かない橙の瞳で、ルトを見た。