月夜の翡翠と貴方
「このまま森を抜けて、飯食いにいこ。抜けるまでは、そんなに時間かからないから」
「……うん……」
……どこへ、向かっているのだろう。
ただ漫然と森を抜けるのだ、と思っていたが、確実にこの旅はどこかへ向かっていた。
方位磁針を借りて、ルトの指す方角を見る。
どうやら街は、西にあるようだ。
…漠然とした、旅。
目的地も、なにもわからない。
ただただ、ルトについていく。
そして行き着いた先に何があるかも、私は知らない。
けれど、知らなくていいと思った。
言っていい事なら、ルトはとっくに言っているだろう。
しかし、彼は何も言わないのだ。
それはきっと、訊くな、ということなのだろう。
だから。
…だから私は、何も訊かない。
*
「あーっと……東門だっけ、南門だっけ」
森を抜け、比較的大きな街に着いた。