月夜の翡翠と貴方
幼い少女は、泣き続けている。
人々は、気まずそうに目を逸らす。
………嫌な、光景だ。
ルトをちらりと見ると、彼は地図から顔をあげ、少女を見ていた。
こちらの視線に気づくと、途端に罰の悪そうな顔をする。
「……なんだよ」
「………なんでも」
それだけ言って、私は再び少女へ視線を戻した。
少女は泣きすぎて、しゃっくり声をあげている。
「…………気になるのか?ジェイド」
「ルトこそ」
「…………」
今のルトの顔が容易に想像できて、可笑しかった。
表情に感情を表さずに、私はただ少女を見つめる。
きっと、ルトも少女を見つめているのだろうと、思いながら。
「………気になるなら、行けば?」
そう、ルトの声がする。