月夜の翡翠と貴方
六、七歳ぐらいだろうか。
ルトがしゃがみ、少女に声をかけた。
少女はその碧眼に大粒の涙を浮かべ、びっくりしたようにルトを見つめる。
広場の人々はルトが声をかけたのを確認すると、何事もなかったかのように振る舞い始めた。
そんな光景に呆れながら、私はルトと少女の様子を眺める。
「えっと……おじょーちゃん、お名前は?」
ルトの問いに、少女は静かに答えた。
「………スジュナ…」
「スジュナちゃんね。お父さん探してんの?」
『スジュナ』といった少女が、こくんと頷く。
「はぐれたの?」
…もう一度、こくんと頷く。
「そっか。えーっと………」
するとルトは振り返って、こちらへ助けを求めるかのような視線を送ってきた。
この後の質問を、考えていなかったようだ。
私はため息をつきながら、ふたりのもとへ歩いて行った。