月夜の翡翠と貴方
戸惑い、キス、予兆
スジュナについていくと、人通りの少ない通りに出た。
古びた建物が、ずらりと並ぶ。
「…る〜るる〜るる〜る〜」
そんな鼻歌が聞こえて隣を見ると、低い位置で頭がぴょこぴょこと跳ねていた。
スジュナはすっかり泣き止んで、晴れ晴れとした表情をしている。
きっと、今のこの顔がこの子の本来のそれなのだろう。
私がスジュナと手を繋ぎ、その隣をルトが歩く。
そうして、十分かれこれ経っただろうか。
ご機嫌にスキップをしていたスジュナが、突然口を開いた。
「おねえちゃんとおにいちゃんは、『こいびとどうし』なの?」
「…こ……っ……」
スジュナを挟んで普通に会話をしていた私とルトは、スジュナの言葉に固まった。
こい、びと………
恋人?
ルトが苦笑いしながら、スジュナに返事をしようとする。
「ちが……」
「誰がこんな男」
言い切る前に、私は真顔で返事をした。
「…ジェイド、ひどくね?」
ルトが、批難の目を向けてくる。
私はふいっと顔をそらすと、静かに言葉を返した。
「何が」
即答するべきところだろう。