駄文 集 【放文】
コロッケかじゃがいもか?
『コロッケかじゃがいもか……』
自問自答のように繰り返しながら、僕はそれを口に運んで咀嚼していた。
遡ること数時間前のこと僕の自宅に彼女がやってきた。
意気揚々とエプロンをつけて台所で鼻歌を歌う彼女の背中を眺めながら、僕は彼女の背中を見つめていた。
そして眼前の食卓に並ぶのはご飯味噌汁……それと何か。
丸く白い大皿の上には黄色味と黒味がかかった『何か』と添えられるように並べられたレタス。
「コロッケ作るの初めてだよね」
そして嬉しそうに笑って語る彼女の顔。
『何か』はコロッケらしい、しかしそれはマッシュポテトの親戚とも呼べるような姿をしていた。
僕は恐る恐ると『何か』を箸で切り分け口へと運ぶ。強烈な油の香りが鼻腔をくすぐり、喉の奥から酸味がこみ上げてくる。
意を決して口へと運ぶとジャガイモの生々しい食感と油にまみれたコゲ味が口いっぱいに広がる。
噛む度に生のジャガイモと油とコゲ味が広がっていく。
「おいしい?」
「うん、とても食えたものじゃない」
「……」
僕の言葉に彼女は黙りこんでしまった。
これをコロッケと称するならば、僕の嫌いな食べ物にコロッケは堂々の殿堂入りを果たすだろう。マッシュポテト油漬け焦げ風味と題しても構わない程の代物であった。
「コロッケ……だよ」
彼女はうつむきながら小さな声でそういった。
僕は頭の中でコロッケが一体何だったのかを思い出していた。
確かにコロッケははジャガイモだ。つまりジャガイモはコロッケの可能性を多分に含んでいると言える。
その論調で言えばコロッケはジャガイモなのだ。つまりジャガイモはコロッケであるという、しかしジャガイモは土に植わっているが、コロッケは土に植わっていない。
ジャガイモを調理した結果がコロッケなのだ。
「コロッケ……嫌いだった?」
「いや……ジャガイモが嫌いだった」
「え?」
そう答える以外に僕はどうすることも出来なかった。
口直しに箸をつけたご飯には芯が残っていた。味噌汁は不思議な味がした。
僕はおもむろに立ち上がり……
自問自答のように繰り返しながら、僕はそれを口に運んで咀嚼していた。
遡ること数時間前のこと僕の自宅に彼女がやってきた。
意気揚々とエプロンをつけて台所で鼻歌を歌う彼女の背中を眺めながら、僕は彼女の背中を見つめていた。
そして眼前の食卓に並ぶのはご飯味噌汁……それと何か。
丸く白い大皿の上には黄色味と黒味がかかった『何か』と添えられるように並べられたレタス。
「コロッケ作るの初めてだよね」
そして嬉しそうに笑って語る彼女の顔。
『何か』はコロッケらしい、しかしそれはマッシュポテトの親戚とも呼べるような姿をしていた。
僕は恐る恐ると『何か』を箸で切り分け口へと運ぶ。強烈な油の香りが鼻腔をくすぐり、喉の奥から酸味がこみ上げてくる。
意を決して口へと運ぶとジャガイモの生々しい食感と油にまみれたコゲ味が口いっぱいに広がる。
噛む度に生のジャガイモと油とコゲ味が広がっていく。
「おいしい?」
「うん、とても食えたものじゃない」
「……」
僕の言葉に彼女は黙りこんでしまった。
これをコロッケと称するならば、僕の嫌いな食べ物にコロッケは堂々の殿堂入りを果たすだろう。マッシュポテト油漬け焦げ風味と題しても構わない程の代物であった。
「コロッケ……だよ」
彼女はうつむきながら小さな声でそういった。
僕は頭の中でコロッケが一体何だったのかを思い出していた。
確かにコロッケははジャガイモだ。つまりジャガイモはコロッケの可能性を多分に含んでいると言える。
その論調で言えばコロッケはジャガイモなのだ。つまりジャガイモはコロッケであるという、しかしジャガイモは土に植わっているが、コロッケは土に植わっていない。
ジャガイモを調理した結果がコロッケなのだ。
「コロッケ……嫌いだった?」
「いや……ジャガイモが嫌いだった」
「え?」
そう答える以外に僕はどうすることも出来なかった。
口直しに箸をつけたご飯には芯が残っていた。味噌汁は不思議な味がした。
僕はおもむろに立ち上がり……
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