フェイス
「い、いいの。大丈夫。えっと……さっきね、忘れ物取りに行った時に見たの。斎藤さん達に……」

「サイトウさん?」


 心当たりのない名前、多分あの五人の誰かのことだと思う。

 真ん中の人だろうか。


「そう、E組の五人衆に囲まれちゃったでしょ?」

「ご、五人衆?」

「自称時永君親衛隊的な。あの一番偉いのが斎藤さんなの。斎藤の何さんだったかは忘れちゃったけど」

「は、はぁ……」


 伊東先輩の口から出てくる言葉はまるで別世界の話のように感じられた。

 現実だけど、現実じゃない。

 多分、この人がまるで少女漫画のことでも話すように明るく話すからだ。

 凄く物語的。
< 102 / 173 >

この作品をシェア

pagetop