フェイス
「そんなに彼は優しいのかい?」


 静かになった教室で彼が言った。

 私は彼の名前も知らない。

 ただ味方じゃないと思っている。


「今度はあれで私を脅す気なの?」


 彼の撮った写真、それはあまり時永の目に入れたくない。

 きっと、それは彼がわかっている。


「そんなことしないよ」


 彼は笑った。


「どうして、女の人ってひどい男から離れていけないのかと思ってさ」


 この前のこともあるし、何を考えているのか、わからなくて居心地が悪い。

 彼の言い方が多分気に食わない。
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