フェイス
「まあ、考えてみれば卑怯だったと思うよ。彼に直接言えばよかったのに、そうしなかったんだから――許してほしいなんて言わない。だって、まだ終わってないし、僕が加速させてしまったものもあるからね」


　彼が何を言っているのかも、よくわからない。

　でも、敵じゃなかったのかなって思う。

　確かに彼が書いた紙一枚で全てが動き出したけど。


「桐渕君にも謝らなければいけないね。果たし状は書けないけど」


　それは、あの挑発も何かのための演技だったということなのか。

　だとしても、返り討ちにされた彼は謝る必要もないと思うけど。

　春平は基本は単純馬鹿だから、もうすっきりしてると思うし。

　もしかして、あの震えは屈辱って言うか、勘違いされて困っていたのかも。
< 123 / 173 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop