フェイス
 春平なら「かかってこいやぁ!」とか叫んだかもしれない。

 生憎私は気の利いたことは言えない。

 ただ黙って、私を取り囲む円が狭まるのを見ていた。


 十数人、それぐらい、なんとかなるはずだった。

 相手が喧嘩慣れしているヤンキーでも。

 けれど、仕留められると思った瞬間、相手に策があったのだと知った。


「今だ、かかれ!」


 号令と共に強襲してくるヘルメット軍の意外に連携の取れた動きが私を翻弄する。

 近付いては離れていく。

 ヒット&アウェイ?

 気が抜ける感じ。

 こんな馬鹿げた作戦初めて。

 これが私を倒すためではなくて、作戦の一つだと気付いたのはスタミナ切れを感じた時だった。
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