フェイス
「私はあなたには微塵も恩はないですけど、御祖父様には大変な御恩があるわけで、やむを得ずあなたみたいな超ぼんくらに仕えて差し上げているだけです」


 私はお祖父様に救われたからこそ、仕える道を選んだ。

 両親は喜んだし、御祖父様も反対はせず、私を屋敷に住まわせてくれた。

 海外に住むことになった親と離れる私を可哀想に思ったかららしいけど。


「はっきり言うよなぁ」


 取り繕う必要なんてない。

 それだけ。

 仕えていても、完全に従順なしもべじゃない。

 春平だってそう。


「つーか、これ、こいつの字じゃねぇよ、ぼんくら」


 春平は文面を凝視して言った。

 いかにも得意げに。


「ほんとだ!」


 まりちゃんもじーっと見て同意した。
< 14 / 173 >

この作品をシェア

pagetop