フェイス
「じゃあ、てめぇだろ?」


 時永が春平にまで疑いの目を向けた。


「はぁっ? 俺もこいつと同じであんたのじいさんが気に入ってるから仕えてやってる身だ。それを裏切るようなことはしねぇ」

「ぶっちぃ、こんなに字、綺麗じゃないもんね」


 まりちゃんの言う通り、春平にこんな字は書けない。



 たとえ、ボールペン字の練習本の二日目以降を真面目にやったとしても。
 副会長兼書記になった時にまりちゃんと一緒に買ってあげたやつ。


「じゃあ……」

「羽石茉莉花です。でも、あたしじゃないですよ」


 時永は見境のない男だった。

 まりちゃんまで疑うなんて馬鹿としか言いようがない。

 “信者”だけど、こっちの事情もちゃんと知っている。
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