フェイス
「そんなに赤くなるな」

「だって、恥ずかしい」


 自分の顔なんて見えない。

 今、どんな表情をしているのかもわからないのに時永は笑った。

 好きで赤くなっているわけじゃないのに。

 恥ずかしいのはこの男のせいなのに!


「これから、もっと恥ずかしいことするのに?」


 ニヤリと笑った顔は意地悪で、一気に熱が頭に上る気がした。

 さっきのキスだって、どこかに隠れたいくらいなのに、湯気が出そう。


「離して、本当に離して!」


 急に走りだしたいような気持ちになって、暴れてみたけど、無駄だった。

 全く、効果なし。

 こんなに強い男だったっけ?
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