フェイス
 生徒会室の前は特にいつもと変わった様子もない。

 春平がいつもかける音楽がかかってないだけ。


 春平はノックもなく、扉を開けた。

 別に遠慮することなんて何もない。

 たとえば、不都合な光景が広がっていたとしてもどうにかなる。


「おい、てめぇら、もう犯人捕まったのか?」


 何やら机の上を見詰めていた時永は顔を上げた。

 そして、その目は鋭く、疑念が露になっていた。


「あんなもんだけで、そう簡単に捕まるわけねぇだろ!」

「だったら、帰れ」


 低い声が帰ってくる。

 いつもの軽い調子じゃない。

 昼とは違う。

 怒っている。

 何に?
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