フェイス
「あるいは、捕まるはずがないのかもしれねぇよな?」


 春平は臆する事なく言った。

 それはまるで挑発するかのようだった。


「何だよ?」

「風音を解放するってことは、あんたが風音から解放されるってことだ。犯人が捕まるまでって言えば俺と風音もここへはこない。あんたは煩わしい全てのことから解放されるってわけだ」

「俺を犯人扱いか?」


 暗い目がこちらを見た。


「そういう見方もあるだろ」


 私が何も言えないまま、春平が答えた。
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