フェイス
「待ってよ!」


 彼は私の腕を掴む。

 けれど、私が振り払う前にその腕を掴む手があった。


「おい、何だよ、お前」

 教室に戻る途中だったのが幸いだったのかもしれない。

 険しい表情の春平がそこにいた。

 いかにも不良っぽい春平が凄むとそれなりに迫力がある。

 普段は変だけど。

 喧嘩で言えば、春平は確実にあの男より強い。


「何って、君には関係ないよ」

「関係ねぇだと?」


 厚かましいと言うか何と言うか、春平の登場にも彼は動じなかった。

 それ以上に春平を挑発してみせた。
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