フェイス
「てめぇは俺達の領域を荒らした」


 春平は怒っていた。

 私と同じように、同じ理由で怒っていた。

 そう私達はまるで兄弟みたいだと思うことがある。

 男と女、事情は違うけれど、境遇は似ている。


「何それ、むしろ感謝してほしいぐらいなのに。尤も、僕は君なんかに負けたりしないけど」

「感謝なんてするかよ。むしろ、謝られても許せねぇくらいだ」

「さっきからわけがわからないんだけど」


 でも、落ち着いているようでありながら、激しい怒りを、業火の如き怒りを発している春平に彼は気付かなかった。

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