フェイス
「ねぇ、はっきりさせようか? 今、ここでさ」

「ふざけんじゃねぇ!」


 ニコリと挑発的に笑う彼に対して春平は獣のように吠えた。

 でも、殴りかかろうとはしなかった。


 私は、今度は止めなかった。

 春平にとってこんな男、そうする価値もないとわかっているから。

 そう、春平が本気で突っかかれるのはあの男だけ。

 あの男だけが春平を本気にさせる。

 理由はよくわからないけれど、春平にとって永遠のライバルなのかもしれない。
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