フェイス
「それでも、俺とやり合いてぇって言うなら果たし状書いて持ってきやがれ!」


 今時、果たし状はないだろうと私は思う。

 まりちゃんが好きそうなフレーズ。

 残念ながら、いくら不思議系のまりちゃんでも突然出てきたりはしない。


 彼は何も言い返さずに震えていた。

 多分、屈辱の怒りに。

 けれど、その表情が見えたのは一瞬だった。


「行くぞ」


 すぐに春平が私の腕を引いた。

 留まる理由もなかった。
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