フェイス
「智也先輩」


 この人はまりちゃんと同じくらい気を抜いて話せる人。

 だけど、まりちゃんよりも付き合いは長くて、より深い事情を知っている。


「ちょっとさ、屋上、行こっか?」


 智也先輩はヘラヘラしているようで、とても鋭い人。

 私は頷くしかない。


 腕章は返しても、屋上の鍵を返すのは忘れていた。

 時永も何も言わなかったし、せめてもの餞別だと思うことにしていた。
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