フェイス
「あの男、きっと、清々するって言っていましたよね?」


 智也先輩はあの男に最も近い。

 とても貴重な存在だからこそ、そちらからも聞いているはず。

 きっと、あの男はそう言ったに違いない。

 多分、椅子に踏ん反り返りながら、王様のように。


「まあ、言ってたよ。言ってたけどね……」


 智也先輩は頷くけれど、はっきりとはしていなかった。


「ついに不満が爆発したって感じですかね」

「俺はそうは思わないけどね」


 智也先輩はやっぱり曖昧な答えをした。
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