フェイス
「お前は何も悪くなんかねぇよ。悪いのはあの我儘な王様だ」

「でも……」


 きっと、この崩壊劇は随分昔から決まっていた。

 脚本ができていなかっただけで流れは決まっていた。

 私が我儘を言ったあの時から。


「だから、気持ち悪ぃって。俺にだってどうにもできねぇしさ」


 春平は私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。

 春平のくせに。

 いつの間にか大きくなってちょっとむかつく。

 小さい頃は私の方が背が高かったのに。

 私はこんなにも押し潰されそうなのに、どうして罵ってくれないのか。

 その方がきっと楽になれるのに。
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