フェイス
「春平より私の方が強いです」

「そういう問題じゃねぇ!」


 強い人間が校内の安全を守るのは多分、当然のこと。

 なのに、どういう問題だと言うのか。

 けれど、きっとこれ以上の議論は無意味なんだと思う。

 どちらも引かないから。

 私は引けないし、この男は引くということを知らない。


「まだ途中なので、失礼します」


 時永はまだ何か言いたげだったけれど、見ないフリをした。

 本当にわけがわからない。

 パトロールが悪いわけではないらしい。

 少なくとも春平のことは必要だと思っている。

 私は必要とされていない。

 最初から必要とされていなかった。

 全て、私の思い上がり。
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