フェイス
「一応、変な虫がつかないように見張ってくれって言われているんですよ」


 これは本当の話、御祖父様からのお願い。

 半分冗談だけど、半分は本気。

 今目の前にいるのだって変な虫。

 多分、ううん、間違いなく、そう。

 何かよくわからない匂いがしてくらくらうる。


「あの時永君がそんなこと言うわけないでしょ!」

「そうよ! そうよ!」


 一人が叫べば、他が続く。

 何、この集団。

 どの時永君がそんなことを言わないのか。

 まあ、あの男は確かにそんなこと言わないし、女子の前では猫を被るけど。
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