クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜
 ”欲”は人の知恵や心を育てるのに、なくてはなりません。
 けれど多すぎる”欲”は、人の心を歪めてしまうのです。

 誰が鱗の持ち主になるのかを巡って、人々は争うようになりました。

 やがて地上の争いが神様の目に留まり、それが竜の鱗のせいだと知られてしまいました。

 言いつけを守らなかった竜を、神様は大層怒りました。


「そんなに地上に降りたいなら、ずっと地上にいるがいい」


 そう言って神様は、竜が二度と人に余計な力を与えないよう、竜の力を封じました。

 力を封じるため、竜はその身を八つに裂かれ、頭は一番大きな大陸の小高い丘の上に埋められ、残る七つの身体は大陸を取り囲むように、七ヶ所に鎖で繋ぎ止められました。

 竜は泣いて許しを請いましたが、神様は決して許す事はありませんでした。

 竜によって”欲”を呼び覚まされた人は、めまぐるしい早さで成長しましたが、その身から争う心が決して消える事はなかったからです。

 今でも竜は、身体を大地に繋ぎ止める鎖を引き千切ろうと、天に向かって時々、その青白い身体を真っ直ぐに伸ばしているのでした。


おしまい。

< 131 / 230 >

この作品をシェア

pagetop