クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜
10,クランベールに降る雪
毎年この時期になると、ユイがおねだりする事がある。
「二十四日の夜は、早く帰ってきてね」
渋い顔をする副局長を尻目に「家事都合だ」と言い捨てて、言われた通りにとっとと帰る。
ユイのおねだりは貴重なのだ。
帰ってみると必ず、食卓の上にはいつもより豪勢な料理が並んでいた。
真ん中に置かれた大きな白いケーキには、周りを取り囲むようにイチゴが並べられ、中央にチョコレートで何やら文字が書かれている。
ユイの国の文字なのだろう。
部屋の隅には小さな木の鉢植えが飾り立てられ、電飾を明滅させている。
そしてケーキにローソクを立て、発泡性の白ぶどう酒を掲げ、意味不明の呪文と共に乾杯する。