クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜
 結衣は素直に返事をした。

 言われてみれば、王子は元々雲の上の人だ。
 彼の人懐こさにごまかされて、普通の少年と同じつもりで接していた。

 王も王子も、隙あらば引きずり下ろしてやろうと考えている人々の中に身を置いている。

 そんな彼らに気に入られているのなら、せめて足を引っ張るような事はしないようにしようと思った。


「後は前髪と眉だ。こっちを向け」


 言われるままに、結衣は身体を反転させる。
 目の前がちらつくので目を閉じた。

 少しの間前髪をサラサラと撫でた後、ロイドは結衣の肩を軽く叩いた。


「もう、いいぞ」


 目を開くと、ロイドが白い棒を左右に振って、おどけたように言う。


「ついでに下の方も、やっとくか?」

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