クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜

父と息子(1)

 商店街を外れると、道路はレンガ敷きから石畳へと変わる。
 道幅も狭くなり、緩やかに蛇行していた。

 小高い丘の上に建つ王宮の前に広がるラフルールの街は、丘の斜面に沿うように拓けているため、平坦な場所は海辺の一部を除いて、ほとんどない。

 ロイドは結衣の手を引いて、商店街から二つめの筋を左へ曲がった。

 狭い路地の両脇には、石造りや土壁の民家が並んでいる。
 建物の高さは三階建てくらいで、木枠の窓が並んでいた。

 緩やかな坂道を進んで行くと、路地は突き当たりで丁字路になっていた。
 その角を右に曲がったところで、ロイドは左手の家を指差した。


「そこだ」


 石を積み上げた土台の上に、白壁のこぢんまりした二階建ての家が建っている。
 入口横にある窓は、木製の雨戸が開きっぱなしで、上の蝶番が片方取れかかって少し傾いていた。

 窓ガラスは元々透明だったはずが、埃と汚れで磨りガラスのようになっている。

 外観も、そこはかとなく廃屋っぽい。
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