ビター・スイート・ラヴ
 真紀は手土産のシェリー酒を佐伯夏美に渡し、奥の小さなテーブルの前に
座った。



 そのテーブルは変った形をしていた。それは電線類を巻き付ける時に使う
もので、巨大な糸巻き状の形をしていた。



 真紀がそのテーブルをしげしげと見ていると夏美がそれに気づき、それ、
拾ったのよ。でもって自分でペンキ塗ってテーブルにしちゃった。結構気に
入ってるんだ、とあっけらかんと言った。




「ああ、なるほどね! どうりで、へんてこな形なんだ‥」


「なにせ、この部屋狭いでしょ。規格物の家具は置けないから、それを使っ
ているの。今、グラスとおつまみを用意するから適当に座って待ってて」



 向かいに座り、改めて犬吠埼での出会いに乾杯した。



 シェリー酒は口あたりが良いのでいくらでも飲めた。真紀も夏美もいける
口でボトルはすでに半分に減っていた。



 酔いも手伝ってか、佐伯夏美は仕事や私生活を語り始めた。



 仕事は大手学習塾が経営するIT関連の会社でプログラマーをしている。
現在付合っている彼は十五歳年上の妻子持ちで、その彼の影響でオートバイ
に乗るようになったことを真紀に告げた。
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