ビター・スイート・ラヴ
 以前、乗っていたオートバイの下取り料金と節約して貯めた頭金五十万円
が用意できた。



 陽気も春らしくなった日曜日、滅多に実家に顔を合わすことがない兄が、
モトグッチの販売店まで車で送ってくれた。多分、兄もモトグッチを見たい
のだろうと真紀は勝手に解釈した。



 真紀の免許で乗れるモトグッチは350ccでイモラという車名のオート
バイだった。



 ちなみに夏美のモトグッチもイモラだった。あいにく福島モーターズには
展示している赤のイモラしか在庫がないとのことで、商談の末に多少の値引
きを条件に、それを購入することにした。



 それは真紀にとって、今までで一番高い買い物になった。



 次の日曜日に念願のグッチが納車された。



 真紀は飛び上がるほど嬉しく、早速慣らし運転から始めた。


 
  慣らし運転とは、新車を購入したときなど、オートバイの各パーツを馴
  染ませスムーズに動かすために、ある回転数以上は上げずに走ること。
  特にエンジンについては、これをするかしないかで、その後のエンジン
  の調子に大きな差が出る。


 
 真紀は夏休み前までに慣らし運転を終わらせグッチを乗りこなさないと夏
美さんに迷惑がかかってしまうと、暇さえあれば筑波山まで走りに行った。
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