ビター・スイート・ラヴ
 浩輔はタバコに火を点けゆっくりと煙を吐きながら左手であさみを
抱き寄せた。



 浩輔の胸に強く鼻先を押し付け、あさみはまるで子供のように甘えて
聞いてみた。



「今日、泊まっていけるの?」


「いや、もう少ししたら帰らないと。出掛けにそんなに遅くならないって
言ってあるし、このところ毎晩午前さまだからな」


「そんなの、嫌! せっかく久し振りに会えたのに‥」


「おいおい、あさみはそんなに聞き分けが悪い娘だったっけ?」


「そうよ。あなたがそうさせたのよ」


「ごめん、俺が悪かった。この穴埋めは必ずするから。そうだ、今度箱根に
うまい物でも食べに行くか?」


「いつもそうやって、はぐらかすんだから。もう絶対、約束よ」


「了解致しました、お嬢様!」



 浩輔はシャワーを浴びる為に浴室へ向かった。
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