ビター・スイート・ラヴ
 その夜はガイドブックに載っている居酒屋に行ってみることにした。



 店はサラリーマンや観光客らで混んでいた。



 真紀と夏美は持ってきた数少ない服の中から選んでおしゃれをしてきた。



 電車や飛行機の旅と違って着るものに事欠く。なにせ毎日が革ツナギで
済んでしまうのだから。



「取り敢えず、無事、ツーリングできた事に乾杯しよう」



 夏美がビールジョッキを真紀のジョッキに合わせた。




「乾杯! あー、おいしい。ひと仕事やり終えた感じだよね。明日は
夏美さんとも千歳空港でお別れだし私はまた、あの三等室での船旅かぁ‥」


「でも、よく走ったよね。結局、層雲峡から帯広、それから富良野から
岩見沢、最後は札幌だもの。この次は道東を走らなくちゃね。北海道に
来て五日目だけど名残惜しいね‥。またこれに懲りずに一緒に走ってね」


「こちらこそ。本当に今回、夏美さんと走っていて楽しかったし、
いろいろな思い出がつくれました。ありがとう」


「まあ、とにかく今夜は飲もう!」




 ジンギスカン鍋をつつきながらジョッキビールを豪快に飲んだ。
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