ビター・スイート・ラヴ
 真紀は気恥ずかしく、まともに谷川の顔を見ることができなかった。



「おはよう、気分はどう?」



 谷川が真紀にマグカップを渡しながら声をかけてきた。



「昨夜は迷惑かけちゃって‥すみませんでした。気分はあまり良いとは言え
ないけど大丈夫です」



 二人はベッドに腰掛け黙ってコーヒーを啜った。



 谷川が車で送って行くというのを断り、真紀は電車で帰った。



 部屋に入り急いでバスタブにお湯を張った。それから着ていた服を脱いで
洗濯機を回した。



 真紀は谷川に少なからず好意を持っていたが、昨日のあの滑稽なまでの
性急さにいささか幻滅した。仕事の上で尊敬し信頼していただけに、まさ
かこんな事態になるとは‥。



 所詮はそこらの男となんら変わりなかった。酔いつぶれた真紀も悪いが
谷川に対して沸々と怒りがこみ上げてきた。
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